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日本の場合には、不良債権の規模はすでにほぼ一○○兆円だったと確定されている(金融庁「平成一九年九月期における不良債権の状況等」二○○八年二月一五日、「不良債権処分損等の推移」(全国銀行)によれば、不良債権処分損の累計は九八・六兆円である)。
しかし、これから明らかになってくるアメリカの不良債権の規模は確定できない。
私たちの独自の試算も紹介したい。
不良資産は、二つの方法で推測することができる。
第一は金融機関(銀行)が決算期ごとに明らかにする損失額を足し上げることである。
金融機関が正しく計上していれば、これが正しい損失額になる。
第二は金融機関の株価の変動から推計する方法である。
第一の方法は、金融機関がまだ損失の全貌を明らかにしていないことで、信頼度に乏しい。
一方、金融機関の株価がその将来の収益を正しく反映しているとすれば、損失の分だけ株価が下落するはずだ。
サブプライム・ローン問題が認識されていなかった二○○七年六月と○八年一二月との株価時価総額の差、公表された損失額、損失に対して新たに調達した資本額である。
表に見るように、第一の場合の損失額は全世界で六五五二億ドル、アメリカで四一八九億ドル、ヨーロッパで二○九三億ドルとなっている。
第二の金融機関の株式時価総額の減少は、二○○七年六月のサブプライム問題が再燃する前と比較すると、全世界で二兆二九四七億ドル、アメリカで九億ドル五○九億ドル、ヨーロッパで一兆八七五億ドルとなっている。
株式市場の評価の方が金融機関の公表ベースよりも厳しい。
ここで株価時価総額から推計したアメリカの損失額に対して、公表した損失額や資本調達額の割合が、ヨーロッパに比べて大きいことに着目してほしい。
アメリカの方が、対応が進んでいるのではないだろうか。
なお、表の公表された損失はブルームバーグが集計したものをベースにしているが、うち上場されている日欧米の金融機関について時価総額とともに掲載している。
ブルームバーグの集計は主要金融機関を網羅しているが、表に掲載した金融機関で集計全体の損失額の八割以上をカバーしており、米系に限ればほぼすべてをカバーしている。
ここで、サブプライム・ローン問題はアメリカの問題であるにもかかわらず、関連の損失はヨーロッパの方が大きいようであることに驚く。
これは、もちろん、イギリス、スペインの住宅バブル崩壊、東欧諸国への貸し込みなど、ヨーロッパ独自の不良債権もあるが、買収したアメリカの金融子会社が抱えた損失、あるいはアメリカの証券化商品を購入する。
金融危機におけるアメリカの損失が本当はいくらであるかは分からないが、IMFの新しい推計にしたがって二・二兆ドルとしておくことにする。
日本の一○○兆円の損失はGDPの二○%だったが、アメリカの損失はGDP一四兆ドルの一五%に相当する。
日本は、GDPの二○%の不良債権で、その後一○年間一%成長に陥った。
アメリカの不良債権の規模は、日本の二○%の四分の三の一五%である。
四分の二一の規模の不良債権なら、七年間一%成長に陥ることになる。
さらに不良債権が実体経済に与える影響を弱めることができれば、アメリカの不況はより小さなものですむだろう。
FRBの大胆な金融緩和が危機の程度をどれだけ弱めることができるかは今後明らかになっていく。
アメリカのITバブル崩壊時、サブプライム危機発生時における生産と金融変数を示したものである。
アメリカのITバブルが崩壊したのを二○○○年六月とする。
鉱工業生産は当然に低下している。
銀行貸出は、半年は伸びているがその後停滞している。
マネーサプライ(M2)は伸びている。
マネタリーベースはほぼ一定で伸びている。
注目すべきは、アメリカの政策金利であるFFレートの急激な低下である。
金利は一七カ月で二%まで引き下げられた(二○○一年一二月末に一・七五%まで引き下げられた)。
マネーの伸びは、金利の低下によってなされたものだろう(ただし、二○○四年になっても金利を引き下げたままだったのはやり過ぎだった)。
名目実効為替レートはこの間一割ほど上昇したが、二○○二年の初めには下がりだしている。
バブル崩壊時、実質賃金は安定し、雇用の減少はわずかだった。
物価、雇用、賃金を見ると(鉱工業生産が書かれているが、目盛りが異なるので、より大きく変動しているように見えることに注意されたい)、消費者物価はこれまでと同様のトレンドで伸びており、デフレに陥ってはいない。
実質賃金は上昇しているが、それは三%程度であり、二○○六年には元の水準に戻っている。
雇用は二○○三年を底として回復した。
今回のサブプライム危機に対する対応を見てみよう。
アメリカのサブプライム危機の発生を二○○七年六月とすると、鉱工業生産は鈍化しはじめ、直近では低下している。
銀行貸出は、ITバブル崩壊時と同じく半年は伸びているが、その後停滞しそうである。
マネーサプライ(M2)は伸びている。
マネタリーベースは停滞していたが急激に伸びている。
やはり注目すべきは、FFレートの急激な貸低下である。
金利は一○カ月で二%まで引き下げられている。
名目実効為替レートは低下していたが、急激に上昇している。
物価、雇用、賃金を見ると、消費者物価はこれまでと同様のトレンドで伸びていた後、急低下している。
たとすると、政策当局には甘い評価をすることになるが、誰もその後の「失われた十年」を予測できなかっただろうから、現実に生産が停滞してからをバブル崩壊の始まりと考えることにしよう。
当然に鉱工業生産は停滞している。
銀行貸出は九三年まで伸びているが、その後横ばいになる。
これは、追い貸しがあったことを示唆するのかもしれない。
マネーサプライ(M2)も横ばいになる。
マネタリーベースの伸びは停滞する。
コールレートはなかなか引き下げられなかった。
株価が、大暴落している九一年においても、コールレートは徐々に引き上げられていた。
アメリカが、一○〜一七カ月で二%まで引き下げているのに対して、日本では九一年一月を起点としても、二%になるまで三年以上かかった。
名目実効為替レートは六割と大きく上昇し、物価、雇用、賃金を見ると、消費者物価の伸び率は鈍化し、九三年ごろからはゼロ%台の伸び率となることが多くなる。
実質賃金は大きく上昇し、九七年までに一○%以上、上昇した。
雇用は九三年まで伸びていたが、その後停滞した。
日本は、残業時間で雇用を調整するので、ここからでは雇用の深刻さが理解できない。
そこで、常用雇用指数と労働時間指数を掛けたものを労働投入量としてこれを見ると、九二年から低下し続けている。
以上の観察から得られたことは何だろうか。
アメリカの場合、不況の発生から金利の引き下げが速いことである。
さらに、為替レートは日本のように不況期に大きく上昇しているということはない。
物価もマネーサプライも安定的に上昇していた。
日本のようにデフレになることはなかった。
さらに、アメリカの賃金調整は速やかだった。
バブル崩壊後の日本のように、賃金が、不況に突入してから一○%まで上がり続けるということはなかった。
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